2011/12/31

未来に向けて

 十八世紀の末近く、長崎に亀という女がいた。亀などという名は、呑ん兵衛の通称である。その通り、なかなかの大酒呑みで、男の方との関係も、いろいろ噂があったけれども、正規の結婚はしない。 
 鋳金を業として、そのできばえは絶品だったという。いくら造っても、気にいらなければこれをたたきこわしてしまう。依頼したものがいかに身分高く、いかに金を積もうとも、品が気にいらねば絶対に渡さない。 
 あるとき、唐船が入港したが、その将来品に二尺ほどの大鯉の鋳物があって、すばらしい出来ばえである。奉行所から、亀にたいし、これに似たものを鋳造してくれぬかと頼んだ。貧しいあばら屋から身すぼらしいなりで亀が現われ、その渡来の鯉を実見した。すると「ああ久しぶりに出会った」とつぶやくので、役人が問いただすと、「以前私のこしらえたものだ」という。こんな絶妙の品を、この貧しい女が、とはとうてい考えられなかった。では、と鯉を割いたところ、亀の名が刻みこまれていたので、一同驚いたという。たしかにかの女の数少ない作品は天下一品のものだったらしい。しかし鋳金することよりも酒を鱈腹口にすることに、かの女の生きがいはあったという。 

和歌森太郎(1987)『酒が語る日本史』pp.243-244 

これ、私のことですか? 
いやいやいあ、私まだ世に絶品を出してない・・・。はぁ。 
こんなひとにわたしもなりたい。 
ということで、この「長崎の亀」を目指して来年も精進精進。 

ところで 
「奉行所から、亀にたいし、これに似たものを鋳造してくれぬかと頼んだ。」 
「から」じゃなくて「は」では?

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